「正義とは何か?」
あなたも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
この問いは古代から現代まで繰り返し議論されてきました。ある時代や社会で「正しい」とされたことが、別の時代や立場から見れば「悪」とされる。つまり、360°すべての人にとって普遍的に正しい「正義」は存在しないのです。
主張や価値観は、常に相対的であり、文脈や立場に依存します。それでも人は「唯一の正しさ」を探し求めがちです。しかし、その姿勢こそが思考停止につながり、危うさを生み出してしまいます。
だからこそ大切なのが「クリティカルシンキング」です。与えられた主張を鵜呑みにせず、違和感を大切にし、問い直し続ける。絶対の正義が存在しない世界を生きる私たちにとって、これは必ず身につけておきたい思考の武器なのです。
なぜ「絶対の正義」は存在しないのか
「正義」という言葉は誰にとっても魅力的に響きます。だからこそ人は「これは正しい」「あれは間違っている」と断言したくなるのかもしれません。けれども冷静に振り返ると、その正義は時代や文化、立場によって大きく姿を変えてきました。
つまり、「絶対的に正しい正義」がどこかにあるわけではありません。正義とは、社会や人間関係の中で相対的に形づくられるものなのです。ここから、もう少し理由を掘り下げてみましょう。
正義は時代と社会によって変わる
ある時代において「正しい」と信じられていたことが、次の時代には「誤り」や「不正義」とされる例は枚挙にいとまがありません。
- 奴隷制度は、古代から近代にかけて多くの社会で正当化されていました。しかし現代では、人権を踏みにじる重大な不正義とみなされています。
- 女性の参政権も、19世紀までは「女性に政治的判断力はない」とされ、権利が認められていませんでした。けれど今では、それを否定すること自体が差別的であり、民主主義に反すると考えられています。
- さらには「死刑制度」「戦争行為」「環境破壊」なども、ある時代や社会では正義として容認され、別の時代や社会では厳しく否定されています。
こうした事例が示すのは、正義は普遍的な真理ではなく、社会や時代の文脈によって形を変える概念だということです。つまり「絶対に正しい正義」は存在せず、常に相対的に規定され続けることを示しています。
誰かにとっての正義は、他者にとっての不正義
「正義」という言葉は一見普遍的に聞こえますが、その内実は立場や状況によって大きく変わります。ある人にとっては「守るべき価値」でも、別の人にとっては「押し付けられた不正義」になり得ます。
- 国家間の対立では、自国の安全を守るための軍事行為や制裁は「正義」とされますが、相手国から見れば「侵害」や「不当な圧力」と映ります。
- 企業活動でも、経営側にとっては「効率化のための合理的な判断」が、従業員にとっては「切り捨てられる不正義」と感じられることがあります。
- 日常生活においても、親が子どものためと思って下す判断が、本人にとっては自由を奪う「不正義」に見えることもあるでしょう。
このように、正義は視点によっていとも簡単に裏返ります。「絶対的に正しい正義」は存在せず、正義とは常に相対的で、誰かの立場に依存します。
三流の思考と一流の思考
では、この相対性を踏まえて私たちはどう考えるべきなのでしょうか。
生成AIが返す答えを思い浮かべてみてください。AIは大量のデータをもとに「もっともらしい」文章を返しますが、それは真理でも唯一の正解でもありません。ある立場から導かれたひとつの解釈にすぎません。
ここで分かれるのは、私たち人間の受け止め方です。
- 三流の思考は、AIや誰かの言葉を「正しい」とそのまま受け入れてしまいます。
- 一流の思考は、それを「仮説」として捉え、問い直しや検証を重ねます。
正義が相対的であるように、AIの答えも相対的です。だからこそ、違和感を手がかりに考えを深める姿勢が欠かせません。
ここで差が出るのは、人間がその答えをどう扱うかです。
- 三流の思考は、AIの出力を「正しい」と受け入れてしまいます。
- 一流の思考は、それを「仮説」として捉え、問い直しや検証を重ねます。
正義が相対的であるように、AIの答えも相対的です。だからこそ、違和感を手がかりに思考を深めていく姿勢が、生成AI時代には欠かせません。
三流の思考は「鵜呑み」
相対的であるはずの主張や価値観を、そのまま「絶対の正しさ」と思い込んでしまう。
- 権威のある人が言ったから正しい
- 皆がそう言っているから正しい
- 違和感があるけど、考えるのは面倒だから正しいことにする
こうした態度は、思考停止につながり、自分の判断力を手放すことに等しいです。
一流の思考は「問い直し」
一一流の人は、与えられた主張をそのまま信じ込むことはしません。必ず立ち止まり、問い直します。
「この主張の根拠は何だろう?」
「もし反対の立場に立ったら、どう見えるだろう?」
「他に説明できる仮説はないだろうか?」
こうして視点をずらしながら問いを重ねることで、単なる情報が「自分の理解」へと変わっていきます。
一流の思考にとって、主張は「絶対の答え」ではなく「検討すべき仮説」にすぎません。違和感を見逃さずに深掘りすることで、自分なりの視点を獲得し、判断の精度を高めていくのです。
違和感を深める3ステップ
「なんとなく引っかかる」──その感覚を流してしまうか、大事にするかで思考の深さは大きく変わります。違和感は、あなたの思考を次の段階へ導くサインです。ここでは、その違和感を活かすための3つのステップを紹介します。
ステップ1:違和感をキャッチする
まずは「変だな」と思った気持ちを無視せず、言葉にしてみましょう。
- 「根拠が曖昧な気がする」
- 「条件が抜けているのでは?」
こうして言語化することで、ぼんやりとした不安が具体的な問いに変わります。
ステップ2:AIの答えを“仮説”として扱う
- 出力は事実ではなく“仮説”と考えます。
- 「この仮説を検証するには何が必要か?」と問い直します。
答えを絶対視するのではなく、「本当にそうだろうか?」と自分に問いかけてみてください。正しそうに見える主張ほど、慎重に確かめる姿勢が大切です。
ステップ3:クリティカルな問いを投げ直す
最後に、違和感を手がかりに掘り下げましょう。
- 「この根拠はどこから来ているのか?」
- 「反対の立場ならどう説明するだろう?」
- 「この考えが間違っているとしたら、どんな条件のときか?」
こうした問いを投げることで、見えていなかった視点が浮かび上がり、理解が一段深まります。
👉 違和感を無視するのは簡単です。でも、そこで立ち止まって問いに変えられる人が、一流の思考へと近づいていきます。
だからクリティカルシンキングが必要になる
絶対の正義も、唯一の正解も、この世界には存在しません。時代や立場によって「正しい」は簡単に入れ替わりますし、AIが返す答えもまた、ひとつの見方にすぎません。
それでも私たちは、つい「これが正しいはずだ」と信じ込み、思考を止めてしまいがちです。そこで大切になるのが クリティカルシンキング です。
クリティカルシンキングは、ただ否定したり批判したりすることではありません。
- 違和感をキャッチすること
- 表面的な正しさを疑うこと
- そして問いを投げ直して思考を深めること
この3つを繰り返すことで、私たちは与えられた答えをそのまま受け入れるのではなく、自分の頭で考え、判断を磨けるようになります。
絶対の答えがないからこそ、「考え続ける力」が私たちの唯一の武器になります。
クリティカルシンキングは、その力を支える思考習慣です。そしてこれは、生成AIの時代を生き抜くために、あなたが必ず身につけておくべきものなのです。
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